ブラウザの選択もリテラシー教育の一環だと考えています

明星大学は日野校と青梅校の 2 つのキャンパスがあり、日野校内にある情報科学研究センターでは、両校合わせて 1,300 台以上あるコンピュータ端末の管理を行なっています。コンピュータは授業をはじめ、学生生活全般でも使われており、情報学部のある日野校には、Windows、Mac、FreeBSD (UNIX) というそれぞれの OS ごとに教室が設けられています。
「校内にある教育用コンピュータの運営に関しては、情報科学研究センター運営委員会があり、技術的なサポートやメンテナンスをはじめ、サーバルームの運用管理などの情報科学研究センターの実務は情報システム課で担当しています。他にも、学生たちから設備の利用やマシンの操作に関する質問を受け付けるといった業務もありますが、1 年生は情報リテラシーの授業が必修になっていることもあり、基本的な操作についてはマニュアルを作成して渡すぐらいで、十分使いこなせているようです」(小峰主任)
情報科学研究センターおよび情報システム課が責任を持つ、あるいはインストールした教職員が使用するコンピュータは、一部を除いて Firefox がインストールされており、デスクトップ上にある「インターネット」のアイコンも Firefox になっています。
「他のブラウザを使うことは制限していませんが、メンテナンスは Firefox のみとすることで、業務が煩雑にならないようにしています。Firefox を選んだ理由は、Internet Explorer (IE) 以外のブラウザがあると知ってもらうためで、それだけでも学生にとっては情報リテラシー教育のひとつになっているのです」
実は、Mozilla のコミュニティに参加していたことがありました

明星大学では、IE と Netscape がブラウザのシェアを争っていた 90 年代後半から Netscape を使用されていました。Netscape 4.1 がリリースされた時は、ダウンロード元となる公式ミラーサイトサーバを提供していたこともあるそうです。
「日本の大学や一部の企業でインターネット使われ始めた頃から、インターネット関連のプロジェクトにも関わっていたこともあり、Netscape に関する情報や貢献は早い時期から行なっていました。そうした関係もあって、現在、大学の標準ブラウザに Firefox が設定されているわけです」と語る小峰主任は同大学の卒業生で、在学中の頃から Netscape を使われていたとのこと。
「学生として情報学部に所属していた時は、今のように校内のどこにでもコンピュータがあるという状況ではなく、授業や研究の素材として、また個人的な興味もあって Netscape を使っていました。実はその頃、Netscape がオープンソース化されたのがきっかけで、オープンソースのプロジェクトやコミュニティ活動に興味を持ち始めまして、一時期、JLP (日本語ランゲージパック) の Windows ビルドのお手伝いをしていたこともありました」
セキュリティ設定は自由度とのバランスが難しい

明星大学では、学生専用サイトを設けたり、授業や学生生活に関する情報をインターネットでも共有できるようにしているため、放課後や休憩時間も端末を使えるよう、実習室や図書館にも端末を置いて、インターネットへ自由にアクセスできる環境を整えています。今どきの大学生らしく、ケータイでインターネットにアクセスする率も高いそうですが、校内でコンピュータを使う学生の姿もかなり多く見られます。
「コンピュータの使い方については、最低限のルールを守ること以外は、あまりうるさくいわず、なるべく自由に使えるような環境を提供しています。かといって、あまり自由にさせすぎるのも問題になるので、もちろんセキュリティ設定はきちんと行なっています」
校内にある端末のセキュリティ設定については、学内の関係者を集めて会議を開き、仕様を決めるようにしています。ただし、どのような設定にするかのバランスが難しく、たとえば、基本的なフィルタリング設定をするだけでも、学生が就活のためにアクセスしようとした下着メーカーや製薬会社のサイトが見られなくなるといったことが起きてしまいます。
「学生の安全を考えると、コンピュータやブラウザをカスタマイズして、大学が想定した使い方しかできないようにすることは技術的には可能です。けれども、がちがちにセキュリティをかけたからといって、必ずしも安全ではありません。現時点では学生の使い方を考えながら、状況に合わせた設定を考えています」
ブラウザの設定はあえて素に近い状態にしています

校内にあるブラウザの設定を、あえてダウンロードしたばかりの素に近い状態にしている理由について、情報学部の矢吹道郎准教授も「大学だからこそ特殊な設定をせずに、普通の使い方から始めるべき」とされています。
「学生を守るため、あるいは使いやすくするという理由で、インターネット環境をカスタマイズするという選択肢ももちろんあっていいと思います。ただし本校の場合は、そうした便利な使い方をするにはどうすればいいのかを考える側の人間を育てることを目指している大学なので、あえて、普通の人がインターネットを使い始めるのと同じような状態にしておくことで、いろいろ考える機会を設けるようにしています」
同じ理由で、コンピュータ本体の設定についても個人用のディスク領域を用意し、プロキシの設定をする以外は、かなり自由度の高い使い方ができる環境にされているそうですが、今のところ大きな問題に直面したことはないとのことです。
「入学時は、コンピュータが使えるというのは、Excel や Word を使えるという意味だと考えている学生たちも、実践的な授業と様々な工夫ができる情報環境の中で、本来の使い方を身に付けることができるようになっていきます。情報学部以外でも、自分のコンピュータを持ち込む学生も多く、インターネットは学生生活になくてはならない道具になっているようです」

