Firefox 法人利用セミナーレポート メジャーブラウザーのサポートポリシー変更で、 あらためて注目を集める 2015 年 10 月 29 日・東京

2015年10月29日(木)、東京・新宿イーストサイドスクエアのソフトバンク・テクノロジー本社セミナールームにおいて、Firefox 法人利用に関するセミナーが開催されました。 これまで企業・教育機関・公共機関など法人利用でシェアの高かった、マイクロソフトのウェブブラウザー Internet Explorer のサポートポリシーが変更される中、この「Office 365 を 安心・安全に活用するためには!! ~ Firefox × クラウドセキュリティ ~」と題するセミナーでは、オープンソースのウェブブラウザー Firefox を法人で導入するために必要となる、カスタマイズや集中管理などについて詳しく解説しました。

株式会社クリアコード 南慎一郎氏 / 結城洋志氏

ソフトバンク・テクノロジーが紹介する、クラウドを安全・便利に使うソリューション

セミナーの冒頭で、本セミナーの主催者であるソフトバンク・テクノロジー株式会社から、営業統括 ソリューション営業統括部 Enterprise Cloud 営業部の佐藤 彰倫氏が、「Office 365 導入における様々なノウハウやアクセス制御ソリューションのご紹介 ~ Office 365 関連ソリューションの機能と利用方法 ~」と題して講演しました。

企業において、複数のクラウドサービスを利用する際の問題点となる、セキュリティの脆弱性とアカウント管理の煩雑化の解決策を取り上げるセッションです。クラウドサービスを安全・便利・手軽に利用するため、シングルサインオンや IP アドレス制御といったセキュアソリューションとして、「Online Service Gate」と「ADFS on Cloud」を紹介しました。

今、改めて Firefox が、法人に選ばれる理由

続いて、このセミナーで最も注目を集めたのが、Firefox の法人利用サポートパートナーである株式会社クリアコードによる「法人利用におけるブラウザーFirefox ~ カスタマイズから集中管理まで ~」と題した講演でした。

株式会社クリアコードの主な事業内容

クリアコードは、オープンソースの技術者集団です。 大手企業を中心に、Firefox や Thunderbird などの Mozilla 製品の技術サポートを 10 年に渡って提供しています。これまでに、10 万名規模を含めた 40 社以上の法人で導入支援などを手がけてきました。

そこで、このセッションでは、まずクリアコードの南 慎一郎 氏が、Firefox の法人利用の概要と利用例を説明しました。

Firefox のリリースサイクル

Mozilla が提供しているウェブブラウザー「Firefox」は、主として、通常版と延長サポート版 (ESR) の2種類があります。通常版は、1.5 ヶ月ごとにリリースされて、新しいモダンな機能を次々と取り入れていきます。しかし、このような高速リリースサイクルでは、法人での利用には、差し替えや社内サポートが追従できない場合があります。そこで、メジャーアップデートは 1 年に 1 回程度の頻度で行い、1.5 ヶ月ごとにセキュリティアップデートを行うのが延長サポート版 (ESR: Extended Support Release) です。

Firefox の2つのバージョンのリリースサイクル

そこで、Firefox を利用している多くの企業は、このESR版を提供しており、クリアコードでは、その導入支援を行っています。

「Mozilla 製品の開発は、Mozilla 財団に所属するエンジニアや、企業に雇われている開発者・個人の開発者らで構成されるコミュニティによって行われています。弊社もこの開発活動に参加しており、たとえば、サポートの過程で見つかった障害を報告したり、原因が究明して、ソースコードの修正パッチを提供するといった活動を行っています。また、このあと紹介する結城のように、アドオン開発を得意とするメンバーも在籍しています。そのために当社では、ソースコードの解析からアドオンの提供まで、高度なサポートサービスを提供しています。」(南氏)

法人利用が増加しているFirefox

Firefox は、保険・電力・中央官庁など、安定性が要求される企業・団体での導入が増えてきているそうです。これは、2 つのパターンがあります。

ひとつ目は、Office365 や GoogleApps・セールスフォースなどのクラウドサービスを利用するため、対応しているモダンなブラウザーが必要になるというもの。この場合、クラウドサービスの利用時のみ Firefox を使います。

ふたつ目は、マイクロソフトのウェブブラウザー Internet Explorer のサポートポリシーが変更になり、2016 年 1 月に Internet Explorer8 (以下、IE8) にセキュリティアップデートなどが終了するためです。

しかし、法人利用では社内システムではIE8以降の対応が間に合わない場合があります。そこで、社内システムには、これまでどおり IE8 を使用し、社外アクセスには、最新のウェブブラウザーを併用するというものです。

どちらも、完全に Firefox に移行する法人は少なく、従来のウェブブラウザーとFirefox を併用する場合が多いそうです。

では、なぜ法人利用で Firefox が選ばれるのでしょうか。

それは、Firefox の前進である Netscape に由来する法人利用のノウハウが充実しているためです。これまでの IE と同じように、情報システム部門がウェブブラウザーを集中管理したいという場合、Firefox のほうがドキュメントやアドオンが比較的容易に見つかるのです。

「多くの企業の情報システム部門では、IE の設定内容を網羅した設定パラメーターシートなどをお持ちになっています。そこで、Firefoxを導入したいというご相談を受けた場合、このパラメーターシートを土台にして、Firefox で実現したい設定内容を付き合わせます。また、Firefox と既存ブラウザーを使い分けたいという場合には、そのための設定やアドオンについても検討します。そして、設定内容とカスタマイズについてご提案させていただき、α版やβ版の提供を経て、2ヶ月~8ヶ月程度で全社展開となります」(南氏)

企業でのFirefox 導入までの流れ

また、保守やメンテナンスにおいても、ESR 版へのバージョンアップに対応するほか、 トラブル発生時には、ソースコードを含めた原因究明と回避策のご提案、当面の回避アドオンのご提供、Mozilla Japan との連携を行うなど、オープンソースならではのサポートを行うそうです。

Firefoxの法人導入の考え方

続いて、クリアコードで、Firefox の法人サポートやアドオン開発を実際に担当している結城 洋志 氏が、Firefox の法人利用の考え方と、設定・カスタマイズ例を詳しく解説しました。

Firefox の特徴

「Firefox の特徴は、極めてカスタマイズ性が高いことにあります。手をかけさえすれば、ほぼどんなことでも実現できてしまいます。場合によっては、途方に暮れてしまうこともあるので、これまでの実際の利用内容を指針にして、設定やカスタマイズの内容を詰めていくようにしています」(結城氏)

設定とカスタマイズの例

すでに、多くの企業から 100 項目以上の設定要望が寄せられているそうです。これらの設定・カスタマイズを実現するには、主に2つの方法があります。

ひとつ目は、MCD(Mission Control Desktop)/AutoConfig と呼ばれる設定機能を使う方法で、設定ファイル (AutoConfig ファイル) を配置することで適用できます。2 つ目は、アドオンにより Firefox 本体の機能を追加したり制御する方法です。

結城氏は、そのうちの代表的なものとして、次のような設定・カスタマイズ例を紹介してくれました。

  • 機能を制限
    • 自動アップデートの禁止 → アドオン:Disable Auto-update
    • 許可しないアドオンの禁止 → アドオン:Disable Addons
  • プライバシー情報  
    • パスワードを保存させない → MCD:LockPref("signon.rememberSignons", false;)
    • 位置情報を提供させない → MCD:LockPref("geo.enabled", false;)
  • 通信料の削減
    • バックグラウンド通信の禁止 → MCD:LockPref("geo.wifi.url", false;)
    • → MCD:LockPref("loop.enabled", false;)

Firefox を集中管理する方式

さらに、Firefox を集中管理する方法についても、いくつかの方法を披露してくれました。

ひとつ目は、設定ファイルをクライアント側に展開する方法です。これは、設定変更を頻繁に行わない法人で役に立つそうです。ふたつ目は、Active Directory のグループポリシーのように設定を集中管理する方法です。この方法では、クライアント側でインストーラを実行するのではなく、設定ファイルをひとつ変えれば、全体に展開することができます。

さらに、クリアコードで公開しているFx Meta Installer を利用すれば、アドオンと設定ファイルが組み込まれたFirefox を一括して導入することも可能になるそうです。

このほかにも、クリアコードでは、Firefox の法人利用について様々な相談内容に対応しています。たとえば、ユーザーサポートのために、複数バージョンのFirefox を共存させたり、移動プロファイルの利用時やユーザープロファイルがネットワークドライブ上にある場合などに、肥大化した設定ファイルを一定期間ごとに圧縮したり、特定サービスの利用時だけFlashのメモリーリーク対策のため一定時間ごとに、自動リロードするアドオンを提供したりといった対応を行ったことがあるそうです。

管理者による設定の集中管理等もできる。

このように、Firefox の法人利用ついて、すでに多くの知見が明らかになっています。現在、クリアコードでは、Firefox で寄せられるカスタマイズ内容を設定シートとして整理しています。この内容は、Mozilla Japan のFAQ やクリアコードのブログなどでも公開されています。また、カスタマイズのために開発したFirefox 用のアドオンなども、Mozilla アドオンやGithub などを通じて公開しています。詳細については、このページ下の関連資料を参照してください。

企業・教育機関・公共機関などにおいて、インターネットの利用がすっかり当たり前になる中、ブラウザーによるロックインとサポートポリシーの変更は、その活動に大きな影響を与えるようになっています。このような囲い込みによるサポートコスト削減とビジネス活動への影響を抑えるためにも、あらためてオープンなブラウザーの活用を進めてはいかがでしょうか。

関連資料

文および写真:テクニカルライタ- 可知 豊